楢崎智亜と野口啓代、さらなる高みへ スポーツクライミングのエース

延期も前向きに

 来夏に延期された東京五輪の新競技、スポーツクライミングで初代金メダリストの期待がかかる日本の男女両エース、楢崎智亜(24)と野口啓代(31)=ともにTEAM au=がモチベーションを維持しながら、さらなる高みを目指す。2人は普段から、茨城県龍ケ崎市にある野口の実家で練習。新型コロナウイルスの影響で競技会から遠ざかっていた期間を経て、今月9日から盛岡市で開催されるリード?ジャパンカップに臨む。1年後の大舞台をにらみ、改めて一歩を踏み出す。(時事通信運動部 岩尾哲大)

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 壁を登る速さを競うスピード、課題攻略の数を争うボルダリング、到達高度を比べるリード。東京五輪は3種目の総合成績で順位を決める「複合」を実施する。楢崎は昨年8月の世界選手権で、単種目のボルダリングと複合の2冠。延期が決まった当初はこの勢いのまま臨みたかった思いもあったそうだが、すぐに気持ちを切り替えた。

 楢崎 すごく流れが良かったと感じていたので、2020年にやりたかったと思った。ただ、ニュースを見ていて、仕方ないとも思った。今よりもさらに高い完成度で、来年出ようと考えた。

 野口は世界選手権のボルダリング、複合でともに銀メダル。長年、世界のスポーツクライミング界をリードしてきた。競技の五輪採用にも尽力した第一人者は、本来なら今夏の東京五輪を最後に引退する考えだった。だが、迷わず現役続行の道を選択。五輪延期を負担に感じるベテランがいたり、他の競技では引退を決断した代表候補がいたりする中、「体力的な心配はない」と力強い。

 野口 あと数カ月で引退するのは寂しいと感じていた。大好きな競技人生を長く送れることをうれしく思った。もっと自分のクライミングを成長させることができる。25、26歳の頃は30代で迎える五輪に対してすごく不安があったけど、実際に30歳になっても、体力的な衰えや変化は感じなかった。31も32も、もはやそんなに変わらないかな。

野口の実家にAI利用の壁

 龍ケ崎市内で牧場を経営していた野口の父、健司さんが牛舎だった建物に設置したクライミング用の壁が練習拠点だったこともあり、コロナ禍による自粛期間中も「3密」を避ける形で、トレーニングを積むことができた。特に最近では、所属先の母体となるKDDIの支援により、行動認識の人工知能(AI)を利用した3種目の壁も野口の実家に完成。一層、充実した環境を手にした。

 楢崎 世界的にも素晴らしい施設。現時点でも各種目で自分の成長を実感できている。これを続けていけば、さらに強くなれる。スピードには体のぶれや軌道(の認識)がすごく重要。そこを目で確認できるのはすごくありがたい。

 野口 AIによって、ここの動きがぶれているだろうと感覚的に思っていたところを、すり合わせられるようになった。自分の動きの線を、腰、手、胸と選んで見ることもできる。自分は本当にまだまだだったんだなと、実感させられ続けている。

進境著しいスピードとリード

 両選手はボルダリングのワールドカップ(W杯)で年間の種目別総合優勝を複数回果たした実力者。競技会が中断していた中で鍛錬を積み、スピードもリードも進境著しい。スピードで楢崎が考案した序盤のホールド(突起物)を経ずに登る「トモア?スキップ」は、今では海外の強豪も取り入れている。2月のスピード?ジャパンカップで、中盤のホールドを使わずに登る「マルチン?スキップ」も試した。さらに最近は、上部でインドネシア選手が採用している独特の動きにも挑んでいる。リードでも海外の有力選手の登り方を研究するなど、細かい技術にも目を向けてきた。

 楢崎 マルチン?スキップは、ほぼほぼ失敗しない。試合をしたら、感覚的には5秒台にいける気がする(日本記録は自身がマークした6秒159)。リードでは登るテンポと、レスト(一呼吸置く休息)のタイミングを意識して練習している。オブザベーション(課題の下見)の時に、どこでレストをするか考える。レスト自体が技術。リードが得意な選手は、体重を足に移すのがすごくうまくて、手の負荷を外して回復させているのがすごく分かる。その感覚がだいぶ分かってきた。

 スピードに苦手意識があった野口も、日本男子でスピードが専門の池田雄大に指導を仰ぎながら成長を実感している。リードはAIを活用したトレーニングの効果も感じている。

 野口 トモア?スキップは完全に物にすることができた。練習で8秒台も出た。来年には8秒台前半にいけたらいい。リードはこれまで、ボルダリングの能力のおかげで登れている状態だった。自分のリードを考えるというか、そんなにしっかり分析したことはなかったので、やっぱり全然違うなと思った。(安全確保のための)クリップのタイミングやリズムなどを見直し、練習するきっかけになった。

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