怖いのは習政権の暴走、「香港」の次は「台湾」か【コメントライナー】

時事総合研究所客員研究員?信太 謙三

 香港の次は台湾か―。

 中国で採択された「香港国家安全維持法(国安法)」が7月1日に施行され、銅鑼湾地区のホテルに「国家安全維持公署」が開設された。

 同署は、実質的な中国治安機関の出先で、北京から派遣された公安省や国家安全省のスタッフが、香港市民の民主化運動や反政府活動などを取り締まり、拘束者を本土に連行して、裁くこともできるといわれている。

 ◆高圧的な「戦狼外交」

 だが、これは中国が1997年の香港返還に際して約束した「一国二制度」を踏みにじるもので、同法によって、「独立」の旗を振っただけで逮捕される者も出てきており、市民は弾圧を恐れて、なかなか声を上げることができない。

 こうした中国の手荒な手法に対する国際社会の批判は強い。が、中華民族の偉大なる復興」をスローガンとして掲げる習近平政権は、それを無視し、強大な軍事力を背景に、高圧的な「戦狼外交」を展開している。

 台湾では、中国が一気に「武力統一」に出てくるのではないか、と警戒感が高まっている。

 ◆侵入を繰り返す

 台湾周辺では、中国軍の航空機や艦艇の動きが、急激に活発化している。

 台湾国防部が6月21日に明らかにしたところによると、同月初旬と中旬だけで、台湾の防空識別圏(ADIZ)侵入が7回もあったという。

 また、中国初の空母「遼寧」と護衛艦5隻が4月半ば、沖縄本島と宮古島の間の海域を通過して太平洋に入り、台湾東岸沖を南下。

 台湾とフィリピンの間にあるバシー海峡を抜けて、南シナ海に向かい、その後、再び同海峡を通過して戻っていったという。

 青島を母港とする「遼寧」が「(1回の航海で)バシー海峡をわざわざ往復するというのは、これまでなかった」といわれ、中国が台湾への軍事進攻に際して想定しているとされる台湾南部からの上陸作戦を視野に入れた行動だった可能性も否定できない。

 これに対し、米軍はイージスシステムを搭載したミサイル駆逐艦を台湾海峡に投入したり、偵察機をバシー海峡経由で、中国本土近くまで繰り返し飛ばしたりして、中国側をけん制している。

 現時点では、米軍が力で中国軍を上回るだけに、中国としても、そう簡単に台湾進攻に踏み切れない。

 ◆「武力統一」という選択肢

 中国と台湾の話し合いによる「平和統一」は遠のくばかり。台湾の人たちが、香港の状況を見て、中国に失望してしまったからだ。

 1月の総統選では、独立志向の強い民進党の蔡英文女史が大勝し再選された。蔡女史はこの直後、英国メディアとのインタビューの中で「われわれは既に独立国家であり、独立宣言などする必要はない」と強調。

 「開戦の危機を排除できないが、われわれは自衛能力を強化し続けてきており、台湾を侵略すれば、中国は非常に大きな代償を払うことになる」と言い放った。

 香港の「一国二制度」の破綻で、それを前提とする中台の「平和統一」も、完全に吹き飛んだということだ。

 中国には今や「武力統一」という選択肢しかない。怖いのは習政権の暴走だ。

 (時事通信社「コメントライナー」2020年7月22日号より)

 【筆者紹介】

 信太 謙三(しだ?けんぞう) 中国問題に詳しいジャーナリスト。1973年時事通信社に入社。香港特派員、北京特派員、北京支局長、上海支局長として中国に通算15年滞在。96年、優れた報道に贈られるボーン?上田国際記者賞を受賞。2004年から10年間、東洋大学教授。著書に「巨竜のかたち」「中国ビジネス 光と闇」「中国人とつきあう方法」など。

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